私が一番ほしかった「勇気」を

ここで手に入れた

山村芸術工房(加子母アトリエ村)

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作曲家 原 優美さん

原 優美さん
作曲家 原 優美さん

ここに来る前は、名古屋芸術大学の講師など名古屋を中心にピアノ活動をしていた。芸術工房のことは新聞で知った友達が「あんた田舎に住みたいって言ってたね」と教えてくれた。加子母はそれまで通ったことはあるがよく知らなかった。でも作曲をするには町に居てはもう出来ないと思っていた時だった。

平成12年4月に入居。その前、1カ月前には度々きていたが、まだ雪があった。運転免許取って1週間、日陰の雪道は凍って運転どころじゃない。坂の下に置いて歩いたこともある。

近所の人からその大変さは聞いていた。「(道は)つるんつるんだ」「まあ自然とともに生きるんだな」と。その言葉を聞いて、覚悟がついたというか、町の人間にとっては「自然とともに生きる」という言葉が新鮮だった。

作曲風景
作曲していると窓辺に鳥が来る
役場職員として見守ってきた内木哲朗さん(左)
役場職員として見守ってきた内木哲朗さん(左)

ある時1週間、名古屋のビルの19階の部屋で仕事をしたことがある。その時、暮らしの感覚、生活感の違いをまざまざと味わった。町で目に入るものを、「刺激的」だと町の人は言うが、少しも美しいとは思わなかった。こんなものを昔はきれいだと感じていたのかと。毎日変わる山の景色のほうがずっと刺激的だ。暗闇にいるからこそ、ほんとに1つの灯りがきれい。

最初のころはここで生きていけるか心配だった。「大丈夫、大丈夫」って自分に言い聞かせていた。私にとって4枚目の新しいCDの題は「心配ないわ」。作曲していると、窓の外に鳥が飛んでくる。ピアノのそばに双眼鏡を置いていて、いつも見ている。人間って環境でつくられるんだなあと思う。もう心配ない。覚悟とか決断、それがここでついた。道が凍っていても、下りるときは下りなきゃいけない。シカに遭うし、イノシシにも車で接触した。私が一番ほしかった勇気をここで手に入れた。

近所との付き合いは深まった。地区の婦人会長もやった。地域コミュニティー誌「かしも通信」の代表でもある。愛知県一宮市出身。

来て本当に良かった

住み心地は最高

山村芸術工房(加子母アトリエ村)

陶芸家 長尾 明里さん

長尾 明里さん
陶芸家 長尾 明里さん

平成12年4月に入居。ここの募集があることは知り合いから教えてもらった。とにかく制作場に困っていたから、加子母のことも下調べもしないで、行き当たりばったりという状況だった。

雪は初体験。だから怖さを知らない。真冬にお客さんを呼んだりした。最初の年には駐車場から車を下の斜面に転落させてしまった。

でも来て本当に良かった。住み心地は最高。来たばかりの時、私の顔を誰も知らないはずなのにあいさつされた。夫が中国の友人を連れてくると、みんなすごく喜ぶ。観光地に行くことはあっても、田舎を肌で感じる機会がないからだ。

生活の不安もない。小さな子供がいても、いざとなれば中津川も、下呂も車ならすぐ着ける。要望を言えば、子供を保育園に入れたいが、ゼロ歳児を預かってくれるところが限られているので、なんとか改善してほしい。

コミュニティーには参加している。子供を通して交流も広がっている。地元で作品の展示会をやった時は大勢に来てもらい、買ってももらった。またやりたい。

私の作品(染付け)は植物をモチーフにしているので、創作の点でもここは最適だ。町で生活していると見ることはないが、ここでは野ブドウもオダマキも、自然のものを目にできる。頻繁に名古屋にも行っていたが、ここで生活することで得るものが多い。体の調子も良くなった。

ただ、だんだん役場(現・中津川市加子母総合事務所)の人も少なくなって、地域づくりの一体感というのが少し希薄になっていくのが寂しい。

制作活動は一休み。なんだか、制作どころか結婚、子育てに追われていた。子供を預けたら、また制作に力を入れたい。

子育て
「子育てに追われて制作に手が回らない」

「長尾明里(あかり)」は陶芸家としての名前。中国大連生まれの芸術家と結婚、周明里さんである。夫の周思昊さんは中国大連民族学院で教べんを取りながら、日中を結ぶアートビジネスを手掛ける。妻以上にこの地に惚れ込んでいる。「ここは不思議な魅力を持っている」「人々はみんな理想を持って生活しているように見える」(加子母村広報誌)と述べ、「現代の桃源郷」(同)と表現するほど。明里さんは三重県伊勢市生まれ。数々の賞を受賞している。

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